
Contents
- 1 インプラントの寿命を左右するメンテナンスの重要性
- 2 インプラントの寿命はどれくらい?メンテナンスの影響
- 3 インプラントの寿命を延ばす8つのメンテナンス法
- 4 1. 定期的な歯科検診を欠かさない
- 5 2. プロによる専門的クリーニングを受ける
- 6 3. 正しいブラッシング方法を身につける
- 7 インプラントのセルフケアに役立つ補助用具
- 8 4. デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
- 9 5. 水流洗浄器(ウォーターピック)を取り入れる
- 10 インプラントの寿命に影響する生活習慣
- 11 6. 禁煙を心がける
- 12 7. バランスの良い食生活を送る
- 13 8. 異常を感じたらすぐに歯科医院を受診する
- 14 転院時のインプラントメンテナンスの注意点
- 15 インプラントの情報を伝える
- 16 インプラント治療に精通した歯科医院を選ぶ
- 17 インプラントメンテナンスに関するよくある質問
- 18 インプラントのメンテナンス費用はどれくらい?
- 19 インプラントのメンテナンスを怠るとどうなる?
- 20 まとめ:インプラントの寿命を延ばすためのポイント
- 21 表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦
インプラントの寿命を左右するメンテナンスの重要性
インプラント治療を受けた方にとって、最も気になるのが「どれくらい長持ちするのか」という点ではないでしょうか。インプラントは適切なケアを行えば10年、15年、さらには20年以上も機能し続けることが可能です。
しかし、せっかく高額な費用をかけて入れたインプラントも、メンテナンスを怠れば寿命が短くなってしまいます。
インプラントと天然歯の大きな違いは、歯と歯茎の間に「付着上皮」と呼ばれる防御機構があるかどうかです。天然歯にはこの防御機構が備わっていますが、インプラントにはありません。そのため、インプラントは天然歯よりも細菌感染に弱く、定期的なメンテナンスがより重要となるのです。
私は日本歯科大学を卒業後、20年以上にわたり多くのインプラント治療に携わってきました。その経験から言えることは、インプラントの寿命を延ばすためには「プロによるメンテナンス」と「自宅でのセルフケア」の両方が欠かせないということです。
この記事では、インプラントを長持ちさせるための8つのメンテナンス法について、専門医の立場から詳しく解説していきます。
インプラントの寿命はどれくらい?メンテナンスの影響
まず、インプラントの寿命について正しく理解しておきましょう。スウェーデン製の主要なインプラントメーカーの調査によると、5年生存率は98.8%、10年では95%以上という高い数値が報告されています。
つまり、適切なケアを行えば、10年後も95%以上のインプラントが問題なく機能し続けるということです。さらに、15年、20年と長期にわたって使用できる可能性も十分にあります。
しかし、メンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」という合併症を引き起こす危険性があります。これはインプラント周囲の歯肉や骨に炎症が起こる状態で、最悪の場合、インプラントが脱落してしまうこともあるのです。
インプラント周囲炎の怖いところは、初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどないこと。気づいたときには炎症が進行していて、治療が難しくなっていることも少なくありません。
だからこそ、定期的なメンテナンスが重要なのです。早期発見・早期治療ができれば、インプラントの寿命を大きく延ばすことができます。
海外の研究では、インプラント周囲の骨吸収が軽度(2mm~4mm)のうちに対処すれば、74%のインプラントが健康な状態に回復しましたが、重度(7mm以上)に進行してからでは、わずか22%しか回復しなかったという報告もあります。
インプラントの寿命を延ばす8つのメンテナンス法
1. 定期的な歯科検診を欠かさない
インプラントを長持ちさせるための最も重要なポイントは、定期的な歯科検診です。一般的には3~6ヶ月に1回の頻度で歯科医院を訪れることをお勧めします。
歯科医院では、インプラントの状態やインプラント周囲の歯肉の健康状態を専門的な目でチェックします。また、噛み合わせのバランスも確認し、必要に応じて調整を行います。
私の臨床経験では、定期検診を欠かさない患者さまのインプラントは、そうでない方に比べて明らかに長持ちする傾向があります。小さな問題も早期に発見できるため、大きなトラブルに発展する前に対処できるのです。
2. プロによる専門的クリーニングを受ける
歯科医院での定期検診時には、歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングを受けることが重要です。インプラント専用の器具を使って、自分では落としきれない汚れや歯石を除去します。
特に注意すべきは、インプラントと歯肉の境目です。この部分に汚れが溜まりやすく、インプラント周囲炎の原因となります。プロによるクリーニングでは、この境目の汚れも確実に除去できます。
ただし、インプラントのクリーニングには専用の器具と技術が必要です。金属製のスケーラーなど、通常の歯のクリーニングで使う器具をそのまま使うと、インプラントの表面に傷がついてしまうことがあります。
当院では、インプラントの表面を傷つけないよう、チタン製やプラスチック製の専用器具を使用しています。また、超音波スケーラーを使用する場合も、インプラント専用のチップを使うなど、細心の注意を払っています。
3. 正しいブラッシング方法を身につける
自宅でのケアの基本は、やはり毎日のブラッシングです。インプラントの周りは特に丁寧に磨くことが大切です。
インプラントのブラッシングのポイントは、歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目に45度の角度で当て、小さく円を描くように磨くことです。力を入れすぎると歯肉を傷つけてしまうので、優しく丁寧に行いましょう。
歯ブラシは、毛先が柔らかめのものを選ぶのがおすすめです。硬すぎる歯ブラシは歯肉を傷つけることがあります。また、電動歯ブラシも効果的ですが、使用する際は強く押し付けないよう注意が必要です。
インプラントのセルフケアに役立つ補助用具
4. デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
歯ブラシだけでは、インプラントと隣接する歯の間の汚れを完全に除去することは難しいです。そこで活躍するのがデンタルフロスや歯間ブラシです。
特にインプラントの周囲は、天然歯に比べて歯周ポケットが深くなりやすいため、フロスや歯間ブラシでの清掃が重要になります。
インプラント用のフロスには、フロス部分が少し固めになっているものもあります。これを使うと、インプラントと歯肉の境目の清掃がしやすくなります。
歯間ブラシは、インプラントと隣接する歯の間のスペースに合ったサイズを選ぶことが大切です。サイズが大きすぎると歯肉を傷つける可能性があるので、歯科医師や歯科衛生士に適切なサイズを相談するとよいでしょう。
私は患者さまに、「フロスや歯間ブラシは、テレビを見ながらなど、リラックスした時間に使うと続けやすい」とアドバイスしています。毎日の習慣にすることで、インプラントの寿命を大きく延ばすことができるのです。
5. 水流洗浄器(ウォーターピック)を取り入れる
水流洗浄器(ウォーターピック)は、水の勢いを利用してインプラント周囲の汚れを洗い流す器具です。歯ブラシやフロスでは届きにくい部分の清掃に効果的です。
特にインプラントブリッジや、複数のインプラントで支える総入れ歯(オールオン4やオールオン6など)を装着している方には、水流洗浄器が非常に役立ちます。インプラントと人工歯の間の隙間に溜まった食べかすを効果的に除去できるからです。
使用する際は、水圧を強くしすぎないように注意しましょう。強すぎる水圧は歯肉を傷つける可能性があります。初めは弱めの水圧から始めて、徐々に自分に合った強さを見つけるとよいでしょう。
インプラントの寿命に影響する生活習慣
6. 禁煙を心がける
喫煙はインプラントの寿命に大きく影響します。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、歯肉への血流を悪くします。その結果、インプラント周囲の組織の治癒力が低下し、インプラント周囲炎のリスクが高まるのです。
実際、喫煙者のインプラント失敗率は非喫煙者に比べて約2倍高いという研究結果もあります。インプラントの寿命を延ばすためには、禁煙が非常に効果的な方法と言えるでしょう。
どうしても禁煙が難しい場合は、せめてインプラント治療前後の一定期間(できれば2週間前から8週間後まで)は喫煙を控えることをお勧めします。また、定期的なメンテナンスをより頻繁に受けることで、喫煙によるリスクを少しでも軽減することが大切です。
7. バランスの良い食生活を送る
健康な歯肉と骨を維持するためには、バランスの良い食生活が欠かせません。特にカルシウムやビタミンCは、インプラント周囲の組織の健康維持に重要な栄養素です。
カルシウムは骨の形成に必要な栄養素で、乳製品や小魚、緑黄色野菜などに多く含まれています。ビタミンCは歯肉の健康維持に役立ち、柑橘類や緑黄色野菜に豊富に含まれています。
また、過度の糖分摂取は口腔内の細菌を増殖させ、インプラント周囲炎のリスクを高める可能性があります。甘いものの摂取は適度に抑え、摂取後はしっかりと歯磨きをすることが大切です。
私は患者さまに「インプラントのためだけでなく、全身の健康のためにも、バランスの良い食事を心がけてください」とお伝えしています。口腔の健康と全身の健康は密接に関連しているからです。
8. 異常を感じたらすぐに歯科医院を受診する
インプラント周囲に違和感や痛み、腫れ、出血などの異常を感じたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。早期発見・早期治療が、インプラントの寿命を延ばす鍵となります。
特に注意すべき症状としては、以下のようなものがあります:
- 歯磨き時の出血
- インプラント周囲の歯肉の腫れや赤み
- 噛むと痛い、または違和感がある
- インプラントがぐらつく感じがする
- 口臭が強くなった
これらの症状は、インプラント周囲炎の可能性を示しています。放置すると症状が悪化し、最終的にはインプラントの脱落につながることもあるので、早めの受診が重要です。
転院時のインプラントメンテナンスの注意点
引っ越しなどの理由で、インプラント治療を受けた歯科医院に通えなくなることもあるでしょう。その場合、新しい歯科医院でもインプラントのメンテナンスを継続することが大切です。
転院時には、以下のポイントに注意しましょう:
インプラントの情報を伝える
新しい歯科医院では、あなたのインプラントについての情報が必要です。可能であれば、以前の歯科医院から以下の情報を入手しておくとよいでしょう:
- インプラントのメーカー名と型番
- 埋入手術の日付
- インプラントの埋入位置
- これまでのメンテナンス内容
これらの情報があれば、新しい歯科医院でもスムーズにメンテナンスを継続できます。情報が不明な場合でも、レントゲン撮影やCT撮影によって、ある程度の情報を得ることは可能です。
インプラント治療に精通した歯科医院を選ぶ
転院先は、できるだけインプラント治療に精通した歯科医院を選ぶことをお勧めします。日本口腔インプラント学会の専門医や認定医がいる医院、またはインプラント治療の実績が豊富な医院が望ましいでしょう。
インプラントのメンテナンスには専門的な知識と技術が必要です。特に、使用されているインプラントのシステムに対応できる医院を選ぶことが重要です。
インプラントメンテナンスに関するよくある質問
インプラントのメンテナンス費用はどれくらい?
インプラントのメンテナンス費用は、歯科医院によって異なりますが、一般的には5,000円~15,000円程度です。検査内容や処置内容によって変動します。
保険適用外の自費診療となることが多いですが、中には保険診療の範囲内で基本的なメンテナンスを行っている医院もあります。事前に費用について確認しておくとよいでしょう。
費用面で心配がある場合は、医療費控除の制度を利用することも検討してみてください。年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで税金の一部が還付される可能性があります。
インプラントのメンテナンスを怠るとどうなる?
メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づいたときには症状が進行していることも少なくありません。
インプラント周囲炎が進行すると、インプラント周囲の骨が溶けていき、最終的にはインプラントが脱落してしまうこともあります。一度失われた骨を回復させることは非常に難しく、再度インプラント治療を行うことも困難になる可能性があります。
インプラント治療は決して安くない投資です。その投資を長く活かすためにも、定期的なメンテナンスは欠かせません。
まとめ:インプラントの寿命を延ばすためのポイント
インプラントを長持ちさせるためのポイントをまとめると、以下の8つになります:
- 定期的な歯科検診を欠かさない(3~6ヶ月に1回)
- プロによる専門的クリーニングを受ける
- 正しいブラッシング方法を身につける
- デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
- 水流洗浄器(ウォーターピック)を取り入れる
- 禁煙を心がける
- バランスの良い食生活を送る
- 異常を感じたらすぐに歯科医院を受診する
インプラントは、適切なケアを行えば10年、15年、さらには20年以上も機能し続ける可能性があります。高額な治療費を支払って手に入れたインプラントを長く使い続けるためにも、日々のセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアを欠かさないようにしましょう。
もし、インプラント治療をお考えの方や、すでにインプラントをお持ちの方で、メンテナンスについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ当院にご相談ください。患者さま一人ひとりの状態に合わせた、最適なメンテナンス方法をご提案いたします。
表参道AK歯科・矯正歯科では、インプラントのメンテナンスから治療まで幅広く対応しております。お気軽にご相談ください。
表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦
https://doctorsfile.jp/h/197421/df/1/
略歴
- 日本歯科大学 卒業
- 日本歯科大学附属病院 研修医
- 都内歯科医院 勤務医
- 都内インプラントセンター 副院長
- 都内矯正歯科専門医院 勤務医
- 都内審美・矯正歯科専門医院 院長
所属団体
- 日本矯正歯科学会
- 日本口腔インプラント学会
- 日本歯周病学会
- 日本歯科審美学会
- 日本臨床歯科学会(東京SJCD)
- 包括的矯正歯科研究会
- 下間矯正研修会インストラクター
- レベルアンカレッジシステム(LAS)
参加講習会
- 口腔インプラント専修医認定100時間コース
- JIADS(ペリオコース)
- 下間矯正研修会レギュラーコース
- 下間矯正研修会アドバンスコース
- 石井歯内療法研修会
- SJCDレギュラーコース
- SJCDマスターコース
- SJCDマイクロコース
- コンセプトに基づく包括的矯正治療実践ベーシックコース (綿引 淳一 先生)
- 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 診断・治療編(石川 晴夫 先生)
- 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 応用編(石川 晴夫 先生)
- レベルアンカレッジシステム(LAS)レギュラーコース
- 他多数参加

