フルマウスインプラント治療の7つのメリットと注意点~専門医が解説

執筆者情報:小室 敦

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フルマウスインプラント治療の7つのメリットと注意点~専門医が解説

歯を失うことは、見た目だけでなく、咀嚼機能や発音、さらには全身の健康にも大きな影響を与えます。特に多くの歯を失った場合、その影響は計り知れません。そんな方々に希望をもたらす治療法が「フルマウスインプラント治療」です。

この記事では、歯科医師として多数のインプラント治療を手がけてきた経験から、フルマウスインプラント治療の7つのメリットと注意すべきポイントについて詳しく解説します。

「歯がボロボロで人前で笑えない」「総入れ歯では不安」という方にとって、この治療法は新たな人生のスタートになるかもしれません。

フルマウスインプラント治療とは?基本を理解しよう

フルマウスインプラント治療は、すべての歯が失われた、または抜歯が必要な状態の患者様に対して行う包括的な治療法です。顎の骨に人工歯根(インプラント)を埋め込み、その上に人工の歯を装着することで、失った歯の機能と見た目を回復します。

従来の総入れ歯と異なり、骨に固定されるため安定性が高く、天然歯に近い噛み心地を実現できるのが大きな特徴です。

特に注目すべきは「オールオン4」や「オールオン6」といった最新のインプラントシステムです。これらは、わずか4〜6本のインプラントで上下の歯全体を支えることができる革新的な方法です。

従来のように歯1本ごとにインプラントを埋入する必要がなく、手術の負担や費用を抑えながらも、固定式の歯を手に入れることができます。

では、このフルマウスインプラント治療が選ばれる理由、そのメリットについて詳しく見ていきましょう。

フルマウスインプラント治療の7つのメリット

多くの歯を失った方にとって、フルマウスインプラント治療には数多くのメリットがあります。ここでは特に重要な7つのメリットを詳しく解説します。

1. 咀嚼力の大幅な回復

フルマウスインプラント治療の最大のメリットは、失われた咀嚼機能を大幅に回復できることです。インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、総入れ歯と比較して格段に安定性が高くなります。

実際に私の患者様からは「硬いものも怖がらずに噛めるようになった」「食事の時間が再び楽しみになった」といった喜びの声をよく耳にします。食べられる食品の幅が広がることで、栄養バランスも改善され、全身の健康維持にも貢献するのです。

2. 審美性の向上

歯を失うと、顔の形も変わってきます。頬がこけたり、口元がしぼんだりして老けた印象になることも少なくありません。フルマウスインプラント治療では、失われた歯と共に顔の形態もサポートするため、若々しい表情を取り戻せます。

患者様の中には「人前で笑うのが怖くなくなった」「マスクを外すのが楽しみになった」と話される方も多く、心理的な面でも大きなメリットがあります。

3. 発音の改善

歯の喪失は発音にも影響します。特に総入れ歯の場合、安定性の問題から「サ行」や「タ行」などの発音が難しくなることがあります。フルマウスインプラントは口腔内でしっかり固定されるため、自然な発音が可能になります。

コミュニケーションがスムーズになることで、社会生活の質も大きく向上するでしょう。

4. 骨吸収の抑制

歯を失った後、使われなくなった顎の骨は徐々に痩せていく「骨吸収」という現象が起こります。これは見た目だけでなく、将来的な口腔機能にも影響を及ぼす深刻な問題です。

インプラントは人工の歯根として機能するため、噛む力が骨に伝わり、骨吸収を抑制する効果があります。長期的な口腔健康維持の観点からも、非常に重要なメリットといえるでしょう。

5. メンテナンスのしやすさ

総入れ歯と比較して、固定式のフルマウスインプラントは取り外しの手間がなく、日常のケアが容易です。専用の歯ブラシやデンタルフロスを使って、天然歯に近いお手入れが可能です。

特に高齢の患者様からは「入れ歯の着脱や洗浄の手間から解放された」という声をよく聞きます。認知症などで自己管理が難しくなった場合でも、介護者の負担軽減につながるメリットです。

6. 心理的な安心感

「入れ歯が外れるかもしれない」という不安から解放されることは、患者様の生活の質を大きく向上させます。食事中や会話中に歯が動く心配がなくなり、社交的な場面での自信を取り戻せます。

私が治療した60代の女性患者様は、「孫と思い切り遊べるようになった」と喜ばれていました。日常生活のさまざまな場面で安心感をもたらすのもフルマウスインプラントの大きなメリットです。

7. 長期的な経済性

初期費用は高額ですが、適切なケアを行えば10年以上、場合によっては一生使える可能性があります。一方、入れ歯は定期的な調整や作り直しが必要で、長期的に見ると意外とコストがかかります。

また、栄養状態の改善や社会活動の活性化による間接的な健康増進効果も、長期的な医療費削減につながる可能性があります。

フルマウスインプラント治療の種類と特徴

フルマウスインプラント治療にはいくつかの種類があり、患者様の骨の状態や希望に合わせて最適な方法を選択します。代表的な治療法について解説します。

オールオン4(All-on-4)

オールオン4は、上下の顎それぞれに4本のインプラントを埋入し、その上に固定式の人工歯を装着する方法です。前方の2本は垂直に、後方の2本は傾斜させて埋入することで、骨量が少ない場合でも対応できるのが特徴です。

骨の移植が必要なケースでも回避できる可能性が高く、手術当日に仮歯を装着できる「即時荷重」が可能なケースも多いです。治療期間の短縮と身体的負担の軽減が大きなメリットです。

オールオン6(All-on-6)

オールオン6は、6本のインプラントを使用する方法です。オールオン4と比較して、より安定性が高く、咬合力の強い方や骨質に不安がある場合に選択されることがあります。

特に上顎は骨質が下顎より軟らかい傾向があるため、より多くのインプラントで支えることで長期的な安定性を高めることができます。

フルマウスインプラント(従来法)

従来のフルマウスインプラント治療では、上下の顎にそれぞれ8〜10本程度のインプラントを埋入します。1本1本の歯に対応するわけではありませんが、より多くのインプラントで支えることで、非常に高い安定性を実現します。

骨の状態が良好で、より自然な感覚を求める方に適していますが、手術の規模や費用は大きくなる傾向があります。

フルマウスインプラント治療の注意点と限界

多くのメリットがあるフルマウスインプラント治療ですが、すべての方に適しているわけではありません。治療を検討する際に知っておくべき注意点や限界について説明します。

1. 全身疾患による制限

糖尿病(特に血糖コントロールが不良な場合)、骨粗鬆症、免疫系疾患、心疾患など、一部の全身疾患はインプラント治療のリスクを高める可能性があります。また、特定の薬(骨吸収抑制剤など)を服用している方も注意が必要です。

ただし、これらの疾患があるからといって必ずしも治療ができないわけではありません。主治医と歯科医師の連携により、適切な時期や方法で治療できる場合もあります。

2. 骨の状態による制約

インプラントを支えるためには、十分な量と質の顎骨が必要です。長期間歯を失っていた場合や歯周病が進行していた場合、骨が痩せてしまっていることがあります。

現代の歯科治療では、骨移植や骨再生療法、サイナスリフトなどの技術で対応できることも多いですが、治療期間の延長や費用の増加につながる可能性があります。

3. 喫煙によるリスク増加

喫煙は血流を悪化させ、治癒を遅らせるため、インプラント治療の成功率を下げる大きな要因です。特にフルマウスインプラントのような大規模な治療では、その影響はより顕著になります。

治療前の禁煙が強く推奨されますが、難しい場合は少なくとも手術前後の一定期間(2週間〜1ヶ月程度)は禁煙することが望ましいでしょう。

4. 治療費用の負担

フルマウスインプラント治療は保険適用外の自由診療となるため、費用負担は決して小さくありません。オールオン4タイプでも片顎300万円前後、上下で600万円程度かかることが一般的です。

ただし、多くの歯科医院ではデンタルローンなどの分割払いに対応しており、月々の負担を抑えることも可能です。長期的な視点で考えると、QOL(生活の質)の向上という点で価値ある投資といえるでしょう。

5. メンテナンスの必要性

インプラント治療後も定期的なメンテナンスは必須です。特にインプラント周囲炎(インプラント周囲の感染症)は、一度発症すると進行が早く、治療が難しいという特徴があります。

3〜6ヶ月に一度の定期検診と専門的なクリーニングを受けることで、長期的な成功率を高めることができます。

フルマウスインプラント治療の流れと期間

フルマウスインプラント治療は複数のステップで進行します。治療の全体像を理解することで、心の準備もしやすくなるでしょう。

1. 初診・カウンセリング

まずは詳細な問診と口腔内検査を行います。CTスキャンなどの精密検査で骨の状態を評価し、治療計画を立案します。この段階で治療の選択肢や費用、期間などについて詳しく説明を受けることができます。

不安や疑問点はこの段階でしっかり解消しておくことが大切です。複数の医院でセカンドオピニオンを求めることも賢明な選択です。

2. 術前準備

必要に応じて残存歯の抜歯や歯周病治療、骨造成などの準備を行います。特に活動性の歯周病がある場合は、インプラント治療前に改善しておくことが重要です。

この段階での治療期間は、口腔内の状態によって大きく異なります。比較的健康な状態であれば数週間程度、骨造成などが必要な場合は数ヶ月かかることもあります。

3. インプラント手術

局所麻酔下(必要に応じて静脈内鎮静法も併用)でインプラントを埋入します。オールオン4などの場合、この段階で仮歯を装着することも可能です。

手術時間は片顎2〜3時間程度が一般的ですが、状態によって前後します。術後は腫れや痛みが生じることがありますが、処方された薬でコントロール可能です。

4. 治癒期間

インプラントと骨が結合する「オッセオインテグレーション」と呼ばれる過程には時間がかかります。即時荷重(手術当日に仮歯を装着)の場合でも、最終的な補綴物の装着までは3〜6ヶ月程度の治癒期間を設けることが一般的です。

この期間中も定期的な通院で経過観察を行い、必要に応じて仮歯の調整を行います。

5. 最終補綴物の装着

インプラントと骨の結合が確認できたら、最終的な人工歯を装着します。見た目や噛み合わせを細かく調整し、満足のいく結果を得られるまで微調整を行います。

最終補綴物の素材には、強度と審美性に優れたジルコニアが選ばれることが多いですが、患者様の希望や状況に応じて選択できます。

6. メンテナンス

治療完了後も定期的なメンテナンスが不可欠です。専門的なクリーニングと検査を受けることで、トラブルの早期発見・対応が可能になります。

日常のセルフケアについても詳しい指導を受け、長期的に良好な状態を維持することが大切です。

まとめ:フルマウスインプラント治療で人生を変える

フルマウスインプラント治療は、多くの歯を失った方に新たな可能性をもたらす革新的な治療法です。咀嚼機能の回復、審美性の向上、発音の改善、骨吸収の抑制など、多くのメリットがあります。

一方で、全身疾患による制限、骨の状態による制約、費用負担、メンテナンスの必要性といった注意点も理解しておく必要があります。

適切な歯科医師との出会いも治療成功の重要な要素です。豊富な経験と実績を持ち、患者様の状態や希望に合わせた最適な治療計画を提案できる歯科医師を選ぶことをお勧めします。

歯の問題で悩まれている方は、まずは無料カウンセリングなどを利用して、ご自身の状態に合った治療法について相談してみてはいかがでしょうか。

新しい歯と共に、新しい人生の一歩を踏み出すお手伝いができれば幸いです。詳しい情報や個別のご相談は、表参道AK歯科・矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。

表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦

院長 小室 敦

https://doctorsfile.jp/h/197421/df/1/

略歴

  • 日本歯科大学 卒業
  • 日本歯科大学附属病院 研修医
  • 都内歯科医院 勤務医
  • 都内インプラントセンター 副院長
  • 都内矯正歯科専門医院 勤務医
  • 都内審美・矯正歯科専門医院 院長

所属団体

  • 日本矯正歯科学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本歯周病学会
  • 日本歯科審美学会
  • 日本臨床歯科学会(東京SJCD)
  • 包括的矯正歯科研究会
  • 下間矯正研修会インストラクター
  • レベルアンカレッジシステム(LAS)

参加講習会

  • 口腔インプラント専修医認定100時間コース
  • JIADS(ペリオコース)
  • 下間矯正研修会レギュラーコース
  • 下間矯正研修会アドバンスコース
  • 石井歯内療法研修会
  • SJCDレギュラーコース
  • SJCDマスターコース
  • SJCDマイクロコース
  • コンセプトに基づく包括的矯正治療実践ベーシックコース (綿引 淳一 先生)
  • 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 診断・治療編(石川 晴夫 先生)
  • 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 応用編(石川 晴夫 先生)
  • レベルアンカレッジシステム(LAS)レギュラーコース
  • 他多数参加

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