顎変形症とは?基本的な理解から始めよう
顎変形症は、上顎や下顎の骨の大きさや位置に異常が生じ、噛み合わせに大きなズレが起きている状態を指します。単なる歯並びの問題ではなく、顎の骨格そのものに問題があるため、見た目だけでなく、咀嚼機能や発音にも影響を及ぼす疾患です。
日本人に特に多いとされるこの症状は、放置すると様々な問題を引き起こします。食べ物をしっかり噛めない、話しづらい、顔の印象が気になるなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
顎変形症の治療は、矯正治療だけでは対応できないケースが多く、外科的な手術が必要となることも少なくありません。しかし、適切な診断と治療によって、機能面も審美面も大きく改善できる可能性があります。
では、具体的にどのような種類があり、どう違うのでしょうか?それぞれの特徴と治療法について詳しく見ていきましょう。

Contents
- 1 顎変形症の主な種類とその特徴
- 2 顎変形症を放置するとどうなる?リスクと影響
- 3 症例別の特徴と治療アプローチ
- 4 下顎前突症(受け口)の治療2 jaw surgery
- 5 上顎前突症(出っ歯)の治療
- 6 開咬症の治療
- 7 顔面非対称(顔のゆがみ)の治療
- 8 顎変形症の診断と治療の流れ
- 9 専門的な診断プロセス
- 10 矯正治療と外科的矯正治療の違い
- 11 治療の一般的な流れ
- 12 顎変形症治療の保険適用について
- 13 保険適用の条件
- 14 保険適用される治療内容と費用
- 15 顎変形症治療のリスクと注意点
- 16 手術に伴うリスク
- 17 治療期間中の生活上の注意点
- 18 長期的な経過観察の重要性
- 19 まとめ:顎変形症治療で得られる生活の質の向上
- 20 表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦
顎変形症の主な種類とその特徴
顎変形症には様々なタイプがあります。それぞれ特徴が異なるため、正確な診断が治療の第一歩となります。主な種類を見ていきましょう。
上顎前突症(じょうがくぜんとつしょう)は、いわゆる「出っ歯」の中でも、上の顎の骨そのものが前方に突き出している状態です。単なる歯の傾きではなく、骨格自体に原因があるため、矯正治療だけでの改善は難しいケースが多いです。笑った時に歯茎が過度に見える「ガミースマイル」を伴うこともあります。
下顎前突症(かがくぜんとつしょう)は、「受け口」や「しゃくれ」とも呼ばれ、下の顎の骨が前に出すぎている状態です。日本人に最も多い顎変形症のタイプで、反対咬合(前歯が逆に噛み合う状態)を伴うことが特徴です。横顔を見ると下顎が前方に突出しているのが分かります。
小下顎症・下顎後退症は、下顎の骨が十分に発達せず、小さすぎる状態です。横顔では顎が後ろに引っ込んで見え、口元が閉じづらいことがあります。遺伝的要因や発育過程での影響が関係していることもあります。
上顎後退症は、上顎の骨の成長が不十分なことで、顔の中央部がへこんだように見える症状です。「受け口」を伴うケースも多く見られます。
開咬症(かいこしょう)は、奥歯は噛み合っているのに、前歯が噛み合わず、常に隙間が空いてしまう状態です。前歯で食べ物を噛み切ることが難しく、発音や見た目にも影響します。
顔面非対称(がんめんひたいしょう)は、上顎や下顎の骨格に生じた左右差が原因で顔にゆがみが生じる状態です。口角の高さに差が出たり、あご先が片側に寄ったりして、輪郭全体がゆがんで見えます。
顎変形症を放置するとどうなる?リスクと影響
「少し顎がずれているだけ」と軽視していませんか?実は顎変形症を放置すると、様々な面で生活に支障をきたす可能性があります。具体的にどのようなリスクがあるのか見ていきましょう。
機能面では、顎のズレやかみ合わせの不具合により、食べ物を十分に噛み砕けなくなることがあります。これが続くと、消化不良や栄養吸収の問題につながる可能性も。また、発音にも影響し、特に「サ行」や「タ行」などの音がはっきりと発音しづらくなることがあります。
健康面のリスクも見逃せません。口がきちんと閉じられない場合、口腔内が乾燥しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが増加します。さらに、免疫力の低下により風邪やインフルエンザなどの感染症にもかかりやすくなることが報告されています。
顎関節に過剰な負担がかかりやすいため、顎の痛みや疲労感を感じやすくなります。場合によっては頭痛や肩こりなど全身の不調を引き起こすこともあるのです。
審美面のリスクも大きな問題です。顎の形状異常によって、受け口や出っ歯、顔の歪みなどが目立ちやすくなり、自信を失ってしまう方も少なくありません。こうした見た目の変化は、精神的なストレスや自己肯定感の低下につながることがあります。
かみ合わせの悪さが原因で口周りの筋肉が過剰に働いたり、逆に筋肉が衰えたりすることで、しわやたるみができやすくなり、老けた印象を与えることもあります。
このように、顎変形症は見た目の問題だけでなく、全身の健康や生活の質に大きく影響する可能性があるのです。早期の適切な診断と治療が重要といえるでしょう。
症例別の特徴と治療アプローチ
顎変形症の治療は、症例によって大きく異なります。それぞれのタイプに応じた治療アプローチを見ていきましょう。
下顎前突症(受け口)の治療2 jaw surgery
日本人に最も多いとされる下顎前突症。上顎の位置に問題がなく、下顎が前方に位置している場合は、「下顎枝矢状分割術(SSRO)」という方法を用いて下顎全体を後方に移動します。これにより、顔の長さが調整され、丸顔で柔和な印象に変化します。
しかし、上顎にも問題がある場合は、「ルフォー1型骨切り術」という方法で上顎も適切な位置に移動させつつ、下顎を後方に移動する「2 jaw surgery」が行われることもあります。
上顎前突症(出っ歯)の治療
上顎前突症では、上顎の前歯が前方に突出し、いわゆる「出っ歯」の状態になることが多いです。また、笑った時に歯茎が過度に露出する「ガミースマイル」を伴うこともあります。
上顎の位置に問題がなく、下顎が後方に位置している場合は、SSROで下顎全体を前進させます。出っ歯の程度が強かったり、ガミースマイルがある場合は、上顎をルフォー1型骨切り術で適切な位置に移動させつつ、下顎を前方に移動する「2 jaw surgery」が選択されます。
また、横顔のバランスを整えるために、オトガイの前進術を同時に行うこともあります。
開咬症の治療
開咬症は、奥歯は噛み合っているのに前歯が噛み合わず、隙間が空いている状態です。この治療には、上下顎の骨を回転させて噛み合わせを改善する手術が行われます。具体的には、上顎のルフォー1型骨切り術と下顎のSSROを組み合わせた「2 jaw surgery」が多く用いられます。
顔面非対称(顔のゆがみ)の治療
顔のゆがみには、上顎の高さの差に原因があるもの、下顎の左右の長さに原因があるもの、またはその両方に原因があるものがあります。上顎に原因がある場合は「」が、下顎にのみ原因がある場合ではSSROが用いられます。
これらの治療法は、患者さんの症状や骨格の状態によって異なります。専門医による詳細な診断と治療計画が重要です。

顎変形症の診断と治療の流れ
顎変形症の治療は、単なる見た目の改善だけでなく、噛み合わせや発音などの機能改善も目指します。診断から治療完了までの一般的な流れを見ていきましょう。
専門的な診断プロセス
顎変形症の診断は、歯科矯正専門医による詳細な検査から始まります。口腔内の状態、顔の形態、噛み合わせのバランスなどを総合的に評価します。レントゲン写真やCTスキャン、顔面写真なども用いて、骨格のずれや非対称性を詳細に分析します。
表参道AK歯科・矯正歯科では、AIを活用した独自のデジタル診断を導入しており、矯正治療のインストラクターとして歯科医師に指導を行う経験豊富な歯科医師が担当します。顎関節や顎のズレまで含めた総合的な診断を行い、最適な治療計画を立案します。
矯正治療と外科的矯正治療の違い
顎変形症の治療には、大きく分けて「矯正治療」と「外科的矯正治療」があります。
矯正治療は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正を用いて歯の位置を整え、噛み合わせを改善する方法です。骨格のずれが軽度の場合に適用されます。
一方、骨格の大きなずれがある場合は、「外科的矯正治療(顎矯正手術)」が必要になります。これは矯正治療と手術を組み合わせた治療法で、顎の骨を切って理想的な位置に移動させます。
治療の一般的な流れ
外科的矯正治療の場合、まず「術前矯正」と呼ばれる矯正治療を行います。これは手術後の理想的な噛み合わせを実現するための準備段階で、通常10〜12ヶ月程度かかります。
術前矯正が完了すると、顎矯正手術を行います。手術は全身麻酔下で行われ、口腔内からアプローチするため、顔に傷跡が残ることはありません。入院期間は約1週間程度です。
手術後は「術後矯正」を行い、噛み合わせの微調整をします。これには約6ヶ月程度かかります。その後、保定装置を使用して治療結果を安定させます。
治療全体では、約2〜3年程度の期間が必要となることが一般的です。
顎変形症治療の保険適用について
顎変形症の治療は、見た目の改善だけでなく機能的な問題も解決する医療行為です。そのため、一定の条件を満たせば健康保険が適用されます。
保険適用の条件
顎変形症として保険適用を受けるためには、一般的に以下のような条件があります。
まず、歯科矯正専門医によって「顎変形症」と正式に診断される必要があります。単なる審美的な理由だけでは保険適用になりません。咀嚼機能や発音などの機能的な問題があることが重要です。
また、治療を行う医療機関が保険適用施設であることも条件となります。すべての歯科医院で保険適用の顎変形症治療ができるわけではないため、事前に確認が必要です。
保険適用される治療内容と費用
保険適用となる場合、矯正治療や顎矯正手術、入院費用なども健康保険の範囲内で受けることができます。自己負担額(3割負担の場合)は、術前後の矯正歯科治療が20〜30万円程度、高額療養費制度を利用した場合の入院手術が1回目約24〜33万円、2回目(抜釘その他)が7〜11万円程度となることが一般的です。
ただし、これはあくまで目安であり、個々の症状や治療内容、医療機関によって異なる場合があります。また、保険適用外の治療オプションを選択した場合は、別途費用がかかることもあります。
顎変形症の治療を検討する際は、保険適用の可否や具体的な費用について、事前に医療機関でしっかり確認することをおすすめします。

顎変形症治療のリスクと注意点
顎変形症の治療、特に外科的矯正治療には一定のリスクや注意点があります。治療を検討する際は、これらについても十分に理解しておくことが大切です。
手術に伴うリスク
全身麻酔に伴う副作用や合併症のリスクがあります。また、手術中に予想以上の出血があった場合、輸血が必要になることもあります。
手術によって神経が障害を受け、顔の表面の皮膚や唇にしびれが出ることがあります。多くの場合、時間の経過とともに改善しますが、完全に回復しないケースもあります。
上顎の手術では、鼻の形が変わることもあります。これは上顎の位置変更に伴う自然な変化ですが、事前に知っておくべき点です。
治療期間中の生活上の注意点
術前矯正期間中は、装置が付いていることで食事や歯磨きに制約が生じます。また、手術後は一時的に顔の腫れや痛みがあり、食事制限も必要です。
手術後約1ヶ月間は、激しい運動や接触スポーツなどは避ける必要があります。また、職場や学校への復帰時期も考慮した治療計画を立てることが重要です。
長期的な経過観察の重要性
顎矯正手術後は、骨の安定や噛み合わせの変化を確認するため、定期的な経過観察が必要です。特に術後1年程度は、定期的な通院が求められます。
また、治療結果を長期的に維持するためには、指示された保定装置の使用や生活習慣の改善も重要です。
これらのリスクや注意点について、治療前に担当医としっかり相談し、十分な理解と準備のもとで治療を進めることが大切です。
まとめ:顎変形症治療で得られる生活の質の向上
顎変形症の種類と特徴、治療法について詳しく見てきました。顎変形症は単なる見た目の問題ではなく、咀嚼機能や発音、顎関節の健康など、生活の質に大きく関わる重要な疾患です。
適切な診断と治療によって、機能面でも審美面でも大きな改善が期待できます。食べ物をしっかり噛めるようになる、発音がクリアになる、顔のバランスが整うなど、日常生活の様々な面で変化を実感できるでしょう。
治療には一定の期間とコストがかかりますが、条件を満たせば健康保険が適用されます。また、治療にはリスクも伴いますが、経験豊富な専門医のもとで適切に進めることで、安全に治療を完了することができます。
顎のズレや噛み合わせに不安を感じている方は、まずは専門医に相談してみることをおすすめします。表参道AK歯科・矯正歯科では、AIを活用した独自のデジタル診断を導入し、顎関節や顎のズレまで含めた総合的な診断を行っています。見た目と機能の両立を目指す包括的な治療で、あなたの悩みを解決するお手伝いをします。
顎変形症の治療は、単に見た目を変えるだけでなく、健康で快適な生活を取り戻すための大切なステップです。ぜひ専門家に相談し、あなたに最適な治療法を見つけてください。
詳細は表参道AK歯科・矯正歯科の顎変形症のサイトをご覧ください。
表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦

https://doctorsfile.jp/h/197421/df/1/
略歴
- 日本歯科大学 卒業
- 日本歯科大学附属病院 研修医
- 都内歯科医院 勤務医
- 都内インプラントセンター 副院長
- 都内矯正歯科専門医院 勤務医
- 都内審美・矯正歯科専門医院 院長
所属団体
- 日本矯正歯科学会
- 日本口腔インプラント学会
- 日本歯周病学会
- 日本歯科審美学会
- 日本臨床歯科学会(東京SJCD)
- 包括的矯正歯科研究会
- 下間矯正研修会インストラクター
- レベルアンカレッジシステム(LAS)
参加講習会
- 口腔インプラント専修医認定100時間コース
- JIADS(ペリオコース)
- 下間矯正研修会レギュラーコース
- 下間矯正研修会アドバンスコース
- 石井歯内療法研修会
- SJCDレギュラーコース
- SJCDマスターコース
- SJCDマイクロコース
- コンセプトに基づく包括的矯正治療実践ベーシックコース (綿引 淳一 先生)
- 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 診断・治療編(石川 晴夫 先生)
- 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 応用編(石川 晴夫 先生)
- レベルアンカレッジシステム(LAS)レギュラーコース
- 他多数参加






