顎関節症の症状とセルフチェック方法〜専門医が解説

執筆者情報:小室 敦

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顎関節症の症状とセルフチェック方法〜専門医が解説

顎関節症とは?症状と原因を理解しよう

顎関節症は、耳の前方に位置する顎関節(がくかんせつ)やその周囲の筋肉に障害が起こる病気です。「口を開けると痛い」「口が大きく開かない」「あごを動かすと音がする」といった症状が特徴的です。

実は日本人の2人に1人が生涯で一度は顎関節症を経験するといわれています。放置すると日常生活に支障をきたすこともある身近な疾患なのです。

顎関節は他の関節と同様に骨と骨が接して動く仕組みを持っていますが、その動きはより複雑です。左右両方の関節頭が体の中心線をまたいで連動し、前後・上下・左右と多方向に動く特殊な関節なのです。

顎関節は下顎頭(かがくとう)と下顎窩(かがくか)という骨のくぼみ・突起、そして「関節円板」と呼ばれる軟骨組織から構成されています。関節円板は帽子のように下顎頭を覆い、顎の動きの際に骨同士が直接擦れないようクッションの役割を果たしています。

顎関節症の主な症状をチェックしよう

顎関節症にはいくつかの特徴的な症状があります。自分自身でも気づきやすい症状をご紹介します。

まず最も多いのが「顎を動かすと音がする」という症状です。口を開けたときに「カクッ」という音がしたり、「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった摩擦音がしたりします。これは関節円板のズレが原因であることが多いのです。

次に「顎が痛む」という症状です。口を開けるときや閉じるとき、物を噛むときに痛みを感じることがあります。耳の前あたりが痛むことが多いですが、頭痛や肩こり、首の痛みとして現れることもあるのです。

さらに「口が開きにくい」という症状も見られます。正常な場合は、指3本(40〜50mm程度)を縦に並べたくらい口が開くのが普通です。しかし顎関節症では、指2本(30mm程度)しか開かないなど、開口障害が起こることがあります。

これらの症状に加えて、耳の痛みや耳鳴り、めまい、首のこり、肩こりなど、一見すると顎とは関係ないように思える症状も現れることがあります。顎関節症は全身に影響を及ぼす可能性がある疾患なのです。

顎関節症のセルフチェック方法

顎関節症かどうかを自分でチェックする方法をご紹介します。以下の項目に当てはまるものがあれば、顎関節症の可能性があります。

基本的な症状チェック

  • 口を開けたときや閉じたときに顎が痛む
  • 口を大きく開けられない(指3本が縦に入らない)
  • 顎を動かすとカクカク・ポキポキという音がする
  • ジャリジャリ・ミシミシといった摩擦音がする
  • 硬いものが噛みにくい、咀嚼しづらい
  • 顎が疲れやすい

関連する症状チェック

  • 頭痛がする(前頭部・後頭部・頭部全体)
  • 耳鳴りがする、耳がつまるような感じがする
  • めまいがすることがある
  • 首や肩がこりやすい
  • どこで噛んでいいか分からない
  • 力いっぱい噛みきれない

これらの症状のうち、5項目以上当てはまる場合は顎関節症の可能性が高いと言えます。特に基本的な症状が複数ある場合は、専門医への相談をおすすめします。

自分で簡単にできる開口チェックとしては、人差し指・中指・薬指の3本を縦に揃えて口に入れてみましょう。3本入らない場合は開口障害の可能性があります。

顎関節症はなぜ起こる?主な原因を解説

顎関節症の原因は一つではなく、様々な要因が複合的に関わっていることが多いです。主な原因として考えられているものをご紹介します。

顎や骨格の不均衡

上顎と下顎のバランスが悪い場合、顎関節に負担がかかりやすくなります。特に顎変形症と呼ばれる上顎や下顎の骨の大きさ・位置に異常がある場合は、噛み合わせにズレが生じ、顎関節症のリスクが高まります。

米国整形・補装具学会(AAOP)のガイドラインによれば、RCP(後退接触位)とICP(中心咬合位)のズレが2mm以上ある場合や、オーバージェットが6mm以上ある場合は、咬合と顎関節症の関連性が高いとされています。

歯の問題と咬み合わせの変化

歯の欠損や不適切な詰め物・被せ物によって、咬み合わせのバランスが崩れることがあります。また、片側だけで噛む癖がある場合も、顎関節に偏った負担がかかります。

臼歯部の多数欠損、片側性クロスバイト、前歯部開咬などの状態も、顎関節症のリスク因子として知られています。

日常習慣と生活環境

頬杖をつく習慣や、うつぶせ寝、スマホを長時間見る姿勢なども顎関節症の原因となることがあります。特に近年増えているのが「スマホ顎関節症」です。

スマホを操作していると、長時間うつむいたり、首や肩に余計な力が入ったりすることがあります。その結果、下アゴが自然な位置からずれて上下の歯が接触したり、アゴまわりの筋肉や関節に過度な負担がかかったりしてしまうのです。

ストレスと心理的要因

精神的なストレスや緊張は、無意識のうちに歯を食いしばったり、歯ぎしりをしたりする原因になります。これらの習慣は顎の筋肉に過度な負担をかけ、顎関節症を引き起こすことがあります。

夜間の歯ぎしりは特に強い力が顎にかかるため、気づかないうちに顎関節を痛めていることがあります。起床時に顎が痛む、疲れを感じるといった症状がある場合は、夜間の歯ぎしりを疑ってみましょう。

顎関節症のメカニズム〜関節円板の役割

顎関節症の代表的なメカニズムとして、「関節円板前方転位」と「関節円板の変形」があります。これらを理解することで、なぜ顎関節症の症状が起こるのかが分かります。

正常な顎関節の動き

正常な状態では、口を閉じているとき、関節円板は下顎頭と下顎窩の間に位置しています。口を開ける際には、円板が下顎頭とともに前方へ滑るように移動します。この滑走運動がスムーズであれば、痛みや音もなく自然に口を開閉できます。

関節円板前方転位

関節円板が前方にズレた状態を「関節円板前方転位」といいます。この状態で口を開くと、下顎頭が関節円板の後方部分を乗り越える際に「カクッ」という音(クリック音)が生じます。

口を閉じるときにも再び音がすることがあり、これを「相反性クリック」と呼びます。転位の程度が軽い場合は一時的な音のみですが、ズレが大きくなると動きに制限が出ることもあります。

関節円板の変形

関節円板が変形してしまうと、開閉口のどの位置でも正常な動きが得られず、違和感や痛みを感じることがあります。変形が大きい場合は、顎を開ける際に関節空間が狭くなり、「シャリシャリ」といった摩擦音がしたり、顎の動きが引っかかって痛みを伴ったりします。

これらの状態が進行すると、開口制限や慢性的な痛みにつながることがあるため、早めの対処が大切です。

顎関節症を予防するセルフケア方法

顎関節症は日常生活の中でのケアによって、予防や症状の軽減が可能です。専門医が教える簡単なセルフケア方法をご紹介します。

アゴの動きをスムーズにするストレッチ

  • 口を大きく開けたり閉じたりする運動を、ゆっくり10回程度行う
  • 顎を左右に動かす運動を、ゆっくり各5回程度行う
  • 顎を前に突き出す運動を、ゆっくり5回程度行う

これらのストレッチは1日2〜3回、痛みが出ない範囲で行いましょう。無理に動かすと症状が悪化することがあるので注意が必要です。

アゴの筋肉の血流を良くするマッサージ

頬の筋肉(咬筋)や側頭部の筋肉(側頭筋)は、顎を動かす際に重要な役割を果たします。これらの筋肉をやさしくマッサージすることで、血流が改善し、筋肉の緊張がほぐれます。

指の腹を使って、耳の前から頬にかけて、円を描くようにやさしくマッサージしましょう。痛みを感じる場合は力を弱めてください。

日常生活での注意点

  • 頬杖をつかない
  • うつぶせ寝を避ける
  • 硬いものを長時間噛まない
  • 片側だけで噛まない
  • スマホを見るときは目線を下げすぎない
  • ストレスをためないよう心がける

特にスマホを使用する際は、姿勢に気をつけましょう。スマホを持ち上げて目線を下げすぎないようにし、15分おきに休憩を取ることをおすすめします。

顎関節症が疑われる場合の受診先

顎関節症のセルフチェックで複数の症状に当てはまる場合や、痛みや開口障害が続く場合は、専門医への受診をおすすめします。

どの診療科を受診すべき?

顎関節症の治療は主に以下の診療科で行われています:

  • 歯科口腔外科
  • 顎関節症専門外来
  • 矯正歯科

特に「顎関節症」と標榜している歯科医院や、日本顎関節学会の専門医・認定医がいる医療機関での受診が望ましいでしょう。

症状によっては耳鼻咽喉科や整形外科を受診することもありますが、顎関節症の専門的な治療は歯科系の診療科で行われることが多いです。

診断と治療の流れ

顎関節症の診断では、問診や口腔内検査、顎の動きの検査などが行われます。必要に応じてレントゲン検査やMRI検査などの画像診断も行われることがあります。

治療法は症状や原因によって異なりますが、一般的には以下のような方法があります:

  • 生活習慣の改善指導
  • マウスピース(スプリント)療法
  • 咬合調整(噛み合わせの調整)
  • 理学療法(マッサージ、ストレッチなど)
  • 薬物療法(痛み止めなど)
  • 矯正治療

重症の場合や他の治療で改善しない場合には、外科的治療が検討されることもありますが、多くの場合は保存的な治療で改善します。

まとめ:顎関節症は早期発見・早期治療が大切

顎関節症は日本人の2人に1人が経験するといわれる身近な疾患です。「カクッ」という音がする、口が開きにくい、顎が痛むといった症状が特徴的ですが、頭痛や肩こりなど全身に影響を及ぼすこともあります。

原因は顎や骨格の不均衡、咬み合わせの問題、日常習慣、ストレスなど様々です。特に近年はスマホの長時間使用による「スマホ顎関節症」も増えています。

セルフチェックで複数の症状に当てはまる場合は、早めに専門医を受診しましょう。また、日常生活での姿勢や習慣に気をつけることで、予防や症状の軽減が可能です。

顎関節症は早期に適切な治療を受ければ、多くの場合改善します。気になる症状があれば、ぜひ専門医にご相談ください。私たち表参道AK歯科・矯正歯科では、顎関節症や顎変形症に対する専門的な診断・治療を提供しています。顎のお悩みはお気軽にご相談ください。

詳細は表参道AK歯科・矯正歯科の顎変形症のサイトをご覧ください。

表参道AK歯科・矯正歯科 院長:小室 敦

院長 小室 敦

https://doctorsfile.jp/h/197421/df/1/

略歴

  • 日本歯科大学 卒業
  • 日本歯科大学附属病院 研修医
  • 都内歯科医院 勤務医
  • 都内インプラントセンター 副院長
  • 都内矯正歯科専門医院 勤務医
  • 都内審美・矯正歯科専門医院 院長

所属団体

  • 日本矯正歯科学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • 日本歯周病学会
  • 日本歯科審美学会
  • 日本臨床歯科学会(東京SJCD)
  • 包括的矯正歯科研究会
  • 下間矯正研修会インストラクター
  • レベルアンカレッジシステム(LAS)

参加講習会

  • 口腔インプラント専修医認定100時間コース
  • JIADS(ペリオコース)
  • 下間矯正研修会レギュラーコース
  • 下間矯正研修会アドバンスコース
  • 石井歯内療法研修会
  • SJCDレギュラーコース
  • SJCDマスターコース
  • SJCDマイクロコース
  • コンセプトに基づく包括的矯正治療実践ベーシックコース (綿引 淳一 先生)
  • 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 診断・治療編(石川 晴夫 先生)
  • 新臨床歯科矯正学研修会専門医コース 応用編(石川 晴夫 先生)
  • レベルアンカレッジシステム(LAS)レギュラーコース
  • 他多数参加

 

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